Elipsonの歴史は、経営責任者ジョゼフ・レオンの歩みと密接に関連しています。 ボルドーに生まれ、パリ国立工芸学校で学び、「音」に関して情熱を抱いていました。 1930年には、CSFホールディングのラジオシネマ部門の一員として映画館で使用されていたサウンド・システムの組み立てと開発に参加しました。同時に、ジョゼフの兄弟ジャンもポータブル録音機器であるMonobloc VV3開発に従事していました。レジスタンスのメンバーであったジョゼフは復員後、Multimoteur社に入社しました。同社は電子玩具用のモーターを専門とする小さな会社で、主たる製品は子供用の機関車と線路模型でした。それらに用いられる変圧器、発電機等の小型電子部品も製造開発していました。 遊びを通じて産業用の電気技術の基礎が学べる教育的な玩具のメーカーでした。
Multimoteur社は市場性の現象を鑑みて、その活動を多様化することを決定し、スピーカーの製造を開始しました。 1940年以降、ヘンリー・バザンとモーリス・ラトゥール(それぞれディレクター&エンジニア)は、後に伝説的なBS50 Chambordスピーカーを誕生させることになる綿密な研究に着手しました。 1948年、ジョゼフ・レオンはMultimoteur社の常務取締役に就任しました。 彼のリーダーシップの下、同社はスピーカーの製作にさらに注力します。スピーカーはその楕円形の特徴を反映してShells(フランス語でConques)と命名されたのです。
1951年に、Multimoteur社はElipson(エリプソン)に改名しました。フランス語の単語ellipse(楕円)とson(サウンド)からなる造語です。 Elipsonの冒険の始まりです。 球形スピーカーは、強力なビジュアルアイデンティティとなって、すぐに評判を高めました。 大胆なデザインにより、ジョゼフ・レオンが考えるスピーカーは、スタジオやテレビで頻繁に使用されるようになり、とりわけテレビでの露出を通じてフランス人の日々の生活に浸透しました。有名なフランスの歌手クロード・フランソワが、Elipsonのスピーカーに囲まれてテレビに初めて登場したり、メゾン・ド・ラ・ラジオ(フランスのラジオ放送局)におけるド・ゴール将軍の就任演説は、Elipson BS50スピーカーを使用して配信されました。
Elipson のサウンド・リフレクター・システムは、広大なスペースに高品質で精妙な音をとどけるサウンド・システムを提供することができました。ジョゼフ・レオンは、さらに研究を進め、どこにもなかったデザインが際立つ新しいスピーカーを作成しました。Elipsonのスピーカーの楕円形のフォルムを実現するためには、さまざまな形に簡単に変えることができる材料を使用する必要がありました。木工は明らかに選択肢から外れ、ジョゼフ・レオンは特別な素材を選択します。それは石膏と天然繊維のブレンド素材で、当時、球形スピーカーを実現するために理想的な特性を備えており、スピーカー製作での初めての使用例になりました。音響性能こそ優れていたものの、それ以前は実装に関連する様々な問題があり、Elipsonによって再び着目されるまで使用されたことは無かったのです。 1953年、フランスのシャトー・ド・シャンボール(ロワール・エ・シェール)で初めて開催された音と光のショーで、BS50スピーカーが一般に紹介されました。効率的かつ審美的に魅力的な、自然で目立つシルエットを備えたスピーカーは、素晴らしい精度で音を伝えました。ドライバ内蔵の球体は、金属製の三脚でエレガントに持ち上げられ、固定具は見えませんでした。上部には、サウンドリフレクター、耳がありました。これは、スピーカーにユニークな外観と技術的な独自性を示すユニークなサインになっています。ジョゼフ・レオンの作品はすぐに目に留まり、引っ張りだこになりました。
その後、彼は、エンクロージュア内での干渉の悪影響について、解決策を取り入れるためマルセル・ダッソール氏に連絡を取りました。問題を解消しながら、Elipsonはキャビネット自体が発生するノイズを低減させる功名なシステムも考案しました。 これらによって、1962年に研究と創造を讃える国家勲章を授与されました。
2008年、情熱的なマインドを持つ若いフィリップ・カレが、ビジネスパートナーのエリック・ジェームスから起業家としてブランドを引き継ぎました。フィリップ・カレは、前衛的な側面とオーディオ的な完成度を両立させ、ブランド再興を成功させました。つまり、インテリアとデザインの世界においてもブランド確立を果たしたのです。Elipsonは独創的なポジションを得て、今日のハイファイ市場で不可欠な役割を果たすようになったのです。
さらに計画を推し進めるために、フィリップ・カレは新しいクリエイティブディレクターとしてジャン・イブ・ル・ポルシェとデザイナーのジュリアン・タレを迎え入れました。Elipsonのスピーカーに捧げる彼の情熱を反映して、ウェブサイトもブランドに特化したものに更新しています。この新しいチームの最初の作品の1つである4260スピーカーシステムは、ハイファイ市場の頂点を目指して、Elipsonの歴史と意気込みを新しい章に刻むものです。
Elipsonはその後、Planet LとPlanet Mスピーカーを製作しました。球形のモデルは、高性能であると同時に審美的にも魅力的なオブジェとして、ブランドの存在意義を具現化しています。従来の広帯域ドライバは、正確な発音で、より深く広い音サウンドステージ実現する同軸ドライバと新たに置き換えられました。
Elipsonはミラノの2011 International Furniture Fairで、12個のPlanet M球面スピーカーをケーブル長の調整によりサブウーファーと組み合わせ果樹のような構造にしたオーディオシステム「Sound Tree」を発表しました。 Sound Treeはデザイナーマウリツィオ・ギャランテ、タル・ランク、ジャン・イブ・ル・ポルシェのパートナーシップの成果でした。また、Elipson Planet Carrara、trompe l'oeilデザインのPlanet Lスペシャルエディションも発表されました。これらの作品は、単に既成のオーディオスピーカーの枠にとどまることの無い、新しい可能性を探求するチャレンジとしてElipson の未来への思いを表しています。